2021/06/08

小説家になって億を稼ごう

 【書 名】小説家になって億を稼ごう
 【著 者】松岡圭祐
 【発行所】新潮新書
 【発行日】2021/03/20
 【ISBN 】978-4-10-610899-0
 【価 格】800円


■読書家はごく一部
読書は生来の素質に大きく左右され、能動的に文章を読んで、受動的に内容を解釈し楽しみや喜びにつながる層とは一握り、そのため日本最大のベストセラー文芸は600万部程度。ある特定の小説家の顧客となるうる層はどうがんばっても300万人以下になります。40人いても39人はお客ではないことになります。


■責了
責任校了の略で印刷所の責任にて校了したことになり、これ以降の直しは一切、行えません。製本前に見本本が送られてきますが、この時にミスが見つかる時がありますが、版を改めない限り、直しはききません。出版社に八つ当たりする作家もいるようで校正漏れは最終的に著者の責任と明記した出版契約書を用意している出版社もいます。


■出版して売れなかった場合
取次が明確に分かります。本の委託販売は105日間なので売れなければ、この間に取次に戻ってきます。


■アルコールが入っているからこそ傑作が書ける
細部のじょうほうを省略しているため楽に作業が行えるように錯覚しているだけ


■文学賞
編集者が気をきかして宴の席を用意します。当選すれば祝賀会になりますが落選すると残念会になります。同席者がどんどん減っていき最後は編集者とサシで飲むことになります。


■映像化は出版に影響するか
映像化されても文庫で1万部ほどの重版のみということがよくあり、それほどの効果はないそうです。

| | コメント (0)

2020/01/26

奇譚を売る店

 【書 名】奇譚を売る店
 【著 者】芦辺拓
 【発行所】光文社文庫
 【発行日】2018/12/20
 【ISBN 】978-4-334-77210-9
 【価 格】660円

星新一の名作に「ノックの音が」がありますが、それを彷彿させるように全ての章が「また買ってしまった」という言葉で始まっています。古書店で買った本により、いろいろな事件などが起きます。

タイトルと同じ「奇譚を売る店」ではタイプライターの話が出てきますが、”ひらがなタイプは梅棹忠夫博士のベストセラー「知的生産の技術」の信奉者にもてはやされた」とあります。確かに一世を風靡しました。

| | コメント (0)

2018/11/10

パンドラの匣

 【書 名】パンドラの匣
 【著 者】太宰治
 【発行所】新潮文庫
 【発行日】2016/11/5
 【ISBN 】978-4-10-100611-6
 【価 格】520円

奥付をみると68刷でした。よく読まれているんですね。太宰治は「人間失格」や「斜陽」など暗いイメージがあるんですが、二編ほど青春快活物を書いています。

その一作が「パンドラの匣」。ちょうど太平洋戦争が終わった頃、結核患者向け療養所に入った青年の周りで巻き起こる小さな日常のドタバタを描いた作品です。この療養所が変わっていて健康道場という名前で、院長は場長、看護師さんは助手、入院患者は塾生と呼ばれ、場長の闘病法である屈伸鍛錬などを行うのが日課になっています。助手のマア坊や、竹さんとのやり取りや個性的な療養患者がなかなか面白い作品で2009年には映画化もされています。(出演は染谷将太、ふかわりょう等)

■「パンドラの匣」の舞台は日下
もともと太宰ファンだった青年が療養生活の内容を日誌に残しており、亡くなってから太宰治に送られ「パンドラの匣」となりました。物語の舞台となった健康道場は東大阪市の日下にあり孔舎衙健康道場という名前です。高台にあって今は跡地だけが残っていまが、案内板もあり、石切駅から離れていて、けっこう不便な場所ですが熱心な太宰ファンが通っているようです。

「パンドラの匣」には”枕元の大きい硝子窓の下には、十坪くらいの「乙女ヶ池」とかいう(この名は、あまり感心しないが)いつも涼しく澄んでいる池があって”とありますが、健康道場跡にある高台から見える池のことですかねえ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017/01/30

5/8(はちぶんのご)

【書 名】5/8(はちぶんのご)
【著 者】野村正樹
【発行所】マイストロ
【発行日】1999/4/14
【ISBN 】4-944174-21-7
【価 格】1500円

主人公(女性)がバーでカクテルを飲みながら推理をしていくのが面白いですね。さすがに元サントリー出身の野村さんですのでカクテルの作り方などの話題も出てまいります。

リストラなど色々な話を織り交ぜながら進んでいくミステリーです。最後は意外な人物が真犯人でしたね。

本の装丁が銀色でそこに目立つ赤で「5/8」のタイトルが書かれています。野村さんが小石さんの人脈創りフォーラムに講演に来られたおりに著者割引で買いました。翌週に知研の2次会で完売になっておりました。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016/12/02

美女と竹林

 【書 名】美女と竹林
 【著 者】森見登美彦
 【発行所】光文社文庫
 【発行日】2010/12/20
 【ISBN 】978-4-334-74895-1
 【価 格】571円

森見ワールド満載の本です。テーマは桂にある知り合いの竹林を刈るだけなんですが、あとは思索というか妄想にふけったりとなります。ところどころに「夜は短し歩けよ乙女」で山本周五郎賞を受賞した話などがアクセントして入ります。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015/07/31

『もしドラ』はなぜ売れたのか?

 【書 名】『もしドラ』はなぜ売れたのか?
 【著 者】岩崎夏海
 【発行所】東洋経済新報社
 【発行日】2014/12/12
 【ISBN 】978-4492045619
 【価 格】1,512円

300万部を超え、売れ続けている「もしドラ」。実際、書く前にどんなドラマがあったのか等の秘話が書かれています。「ブレーンはやめて、明日からはおれの運転手になれ。それができないなら辞めてもらう」秋元康からの「最後通告」から話がはじまります。秋元康の弟子だったという話は知っていたのですが、本を書くに至るまでいろいろあったんですね。発端はハテナブログに書いていた文章をダイヤモンド社の編集者を見つけたところから本作りがスタート。ですが売れる本にするために周到な準備をしていたんですね。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/11/18

銀婚式物語

 【書 名】銀婚式物語
 【著 者】新井 素子
 【発行所】中公文庫
 【発行日】2014/10/25
 【ISBN 】978-4-12-206027-2
 【価 格】880円

25年前に「結婚物語」を読みましたが、実際、結婚する時に同じようなドタバタに遭遇。ですので、「結婚物語」は、なかなかの名著でした。それから25年、無事に銀婚式を迎え、そのドタバタ騒動の物語。ウチも銀婚式には近くのイタリア料理店へ食べにいきましたなあ。

作家という仕事柄、仕方ないのでしょうが3万冊の蔵書というのがすごいですね。ですので住む家の設計が書庫の設計になったりします。また未成年の時から小説家デビューしたので出版社としては接待で飲みにつれていくわけにもいかず、代わりに「ぬいぐるみ」ということで積もり積もって3千もあるというのも想像できませんなあ。ハチャメチャながら楽しめる1冊です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/06/20

ペンギン・ハイウェイ

 【書 名】ペンギン・ハイウェイ
 【著 者】森見登美彦
 【発行所】角川文庫
 【発行日】2013/1/20
 【ISBN 】978-4-04-100561-3
 【価 格】629円

ある日、突然、ペンギンが登場するところから物語がスタート。小さな町を巻き込んで、小学4年生の少年が謎を解いていくのですが考え方がとても論理的ですごいですね。お父さんの示唆によるものなんですが「毎日の発見を記録しておくこと。そして、その発見を復習して整理すること」なんて言葉をしっかり守る点が小説ながらすごいですね。第31回日本SF大賞受賞作です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/03/16

漱石夫妻 愛のかたち

 【書 名】漱石夫妻 愛のかたち
 【著 者】松岡陽子マックレイン
 【発行所】朝日新聞社
 【発行日】2006/10/30
 【ISBN 】978-4-02-273170-8
 【価 格】700円

漱石の孫にあたりますが、生まれたのは1916(大正5)年に漱石が49歳でなくなってからです。漱石の奥さんだった夏目鏡子は39歳で漱石をみとり、子供6人を育てあげ、85歳で亡くなっています。

祖母や母親(漱石の長女)に聞いた、漱石についていろいろな話が出てきます。

「吾輩は猫である」
漱石の出世作になった作品ですが、モデルとなる迷い猫がやってきたのは1904(明治37)年。何回、追い出しても家に入ってくる猫を、よく漱石の家に来ていたお婆さんが、猫をひっくり返して、「この猫が爪まで真っ黒で、きっと福の神だから、追い出さないで飼っておきなさい」と言ったそうです。まさに福の神になりました。

猫がやってきた家は以前に森鴎外が住んでいて、今は明治村に保存されている家です。その後、2ケ所移転しましたが、猫もついてきて1908年に死にました。福猫でしたので、墓まで作ったそうで、漱石は懇意の人に猫の死亡通知を出しています。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006/08/27

銀の匙

 【書 名】銀の匙
 【著 者】中 勘助
 【発行所】岩波文庫
 【発行日】2006/01/25
 【ISBN 】4-00-310511-7
 【価 格】500円



高橋輝次氏の『編集の森』で中勘助氏の「検印」という詩が紹介されており、元となった銀の匙を買ってきました。奥付を見ると1935年11月30日に第一刷となっていますね。

今も刷が重ねられています。この作品を最初に認めたのが夏目漱石であると和辻哲郎の解説が巻末に掲載されていますが、日付がなんと昭和10年になっています。

前編は幼い日の心象風景をつづった不思議な作品ですが、小さな頃、皆、こんな風だったんだろうなあ。と感じさせてくれる作品です。それにしてもきれいな文章ですね。

→ 『銀の匙』

| | コメント (0) | トラックバック (0)