2005/11/17

本の環境学

 【書 名】本の環境学
 【著 者】紀田順一郎
 【発行所】出版ニュース社
 【発行日】1975/11/20
 【価 格】1300円 (古書値1500円)



以前、日本古書通信の後ろの古書目録にあり、九州の古本屋さんに頼んで送ってもらった本です。装丁が同じ出版ニュース社の「書物・情報・読書」(紀田順一郎著)と同じ雰囲気で落ち着いた感じです。

それにしても昔の読者は偉かったですね。

「無学な貧農の寡婦が本を読んでいけないいわれはありませぬ。多忙な農事の暇を見つけて、一生かけても昭和文学全集1巻づつ読んでいきたいと存じます。つきましては私貧農の身として、お恥ずかしいことでございますが、購買するにも現金の持ち合わせがありませね。それでお米をお送り致して本にかえて頂くわけには参らぬものでしょうか。」
と出版者に送った読者がいました。

学校に行けないため本を読んで勉強する人も多く、そういう経験のある人は丁稚生活からやがて出版社を興し、自分と同じように学校に行けない人のため本で勉強してもらわねばという使命感で出版していました。

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2005/09/28

書林探訪

 【書 名】書林探訪
 【著 者】紀田順一郎
 【発行所】松籟社(しょうらいしゃ)
 【発行日】2005/6/10
 【ISBN 】4-87984-234-6
 【価 格】1600円



紀田順一郎氏の古書の話題が満載の一冊です。

■セドリの語源
本の背中を見て棚から抜くのでセドリかなと思っていたのですが、瀬戸内海の沖を走る船からハシケで荷物を受け渡しする仕事を「瀬取り」と言っており、これが転じたのではと本に書かれていました。

■小寺謙吉の「宝石本わすれなぐさ」(西沢書店)
面白い装丁の本ですので私も持っています。紀田順一郎氏によると作者は蒐集の方法でかなり物議を醸したことがあることで有名な人だそうです。ですのでかなりの蔵書があるはずです。既に故人のようですが、蔵書の行方はどうなったんでしょうね。

■告別式は中江兆民から
葬儀の告別式ですが、1901年中江兆民の葬儀から始まったんですね。中江兆民は無神論者で、葬式など無用だと遺言したため困った親族が板垣退助などに相談。宗教にとらわれない形で告別式と名づけた葬儀を行いました。

■ジョルジュ親王
有名な大津事件ですが、ニコライ皇太子が切りつけられたところをステッキで阻止したのがギリシャのジョルジュ親王だったそうです。ロシア人ばかりと思っていたのですが意外な事実ですね。ジョルジュ親王は、後に第一回のオリンピック大会の審判長をつとめます。1957年に亡くなっていますのが、生涯で一番印象的だったのが大津事件だと言い残しています。日本にとってはロシアから攻め込まれるのではと大騒ぎになった事件でした。大津事件を起こした津田三蔵の墓は伊賀上野の寺町にあります。

■大学生と古本
昔の古本屋は学生でにぎわっていました。本を売る前に友人に頼んで、「こんな本はないか。ぜひ欲しいんだか、いい本なんだ」と自分を売る本の名前を言ってもらって、しばらくしてから本を売りに行きました。3割高で買ってもらえたとか、よき時代でしたね。 

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