行動経済学の逆襲(上)
【書 名】行動経済学の逆襲 上
【著 者】リチャード・セイラー
【発行所】ハヤカワ・ノンフィクション文庫
【発行日】2019/10/20
【ISBN 】978-4-15-050547-9
【価 格】840円
ノーベル経済学者であるリチャード・セイラーによる行動経済学全史です。経済学では完全に合理的な人間(ホモエコノミカス)を想定しましたが、実際の人間はそんな行動をとりません。そこに着目した経済学です。
■機会起用と保有効果
経済学部長はワイン好きで以前10ドルで買ったワインが今では100ドルを超えるワインがワインセラーに並んでいます。特別な日にそのなかの1本を楽しんでいます。地元のワイン屋が時価で引き取るといいながら一本も売っていません。経済学的に合理的な行動ではありませんがやめませんでした。
機会費用-ある活動をすることで失われる利益 この場合、ワイン屋に売らなかった100ドルが機会費用となります。
保有効果-既に保有しているものは、いつでも手に入れられても、まだ保有していないものより高い価値を感じる
■サンクコストは無視しろ(経済学者の金言)
サンクコスト-既に支払ってしまって取り戻せないお金 猛吹雪の中を運転してバスケットの試合を見に行くのはチケットを買ったサンクコストを無視できないから
筆者自身も膨大な労力をつぎ込んだ研究テーマを変えた方がよいので、結局はずるずるしてしまい。分かってはいるけど、実際には難しい
■プロスペクト理論
人は損失についてリスク追求型
・確実に100ドルを失う
・50%の確率で200ドルを失うが50%の確率で何も失わない - ほとんどこちらが選ばれる
・確実に100ドルをもらう - ほとんどこちらが選ばれる
・50%の確率で200ドルもらい50%の確率で何ももらえない
■見えざる手
アダムスミスの「国富論」に出てきますが「見えざる手」は本では一度しか出てこない
■スキー場のリフト券の値段
年に1、2回来る客 交通費、食費、宿泊費を含めたスキー旅行の総費用の一部がリフト券として認識される
地元客(リピーター) 値上げにシビア そこで作ったのがテンパック(平日5枚、休日5枚)で販売価格の4割引で事前購入
事前購入するとお金を節約する「投資」となる。実際に販売したところリフト券の60%が使われていることが判明。4割引にしても何も影響がなかった。使い切らなかった人はスキー場に行かなかった自分が悪かったと考えました。テンパックは有効期限が1年でしたが、新しいテンパックを買えば以前の残った分も使えるようにすると「公正」な異形という評価につながります。
初滑りの時はベストコンディションではないので割引するのが常でしたが、シークレット・セールで行いました。レジに正規料金を支払いにやってきた客に「今、セールなんで次回、使える50%オフ差し上げます」と伝えます。これで顧客満足をあげられます。そしたら会話を聞いていたテンパックで乗ろうとした地元客がテンパックを使うのをやめて、正規料金を払って、このクーポンをゲットしたそうです。
■公正
ハリケーンの後にベニヤ合板の価格が和少なるのは被害が一番多かった地域が多くなります。これは同じ顧客と長期にわたって取引する企業には「公正」が求められるからです。MBAコースの教え子は猛吹雪の後の雪かき用シャベルを値上げすべきと信じていますが、これで実際に経営するとえらい目にあうことになります。
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