« データが語る日本財政の未来 | トップページ | 持統天皇 壬申の乱の「真の勝者」 »

2019/11/17

それでも日本人は戦争を選んだ

 【書 名】それでも日本人は戦争を選んだ
 【著 者】加藤陽子
 【発行所】新潮文庫
 【発行日】2016/07/01
 【ISBN 】978-4-10-120496-3
 【価 格】750円

なぜ日清、日露、第一次世界大戦、太平洋戦争を日本人は選らんだのか、よく知られていない話などが満載です。神奈川県の私立栄光学園で行った5日間の講義をもとにした本で生徒に理解できるよう語られているので、とっても分かりやすい本になっています。

■日露戦争 シュタインの主権線、利益線
山形有朋がヨーロッパに行った時にウィーン大学のシュタイン先生に会います。ロシアがシベリア鉄道を作っている時で国防に対する相談です。シュタイン先生が日本のとるべき道として言ったのは
主導線ー主権の及ぶ国土の範囲
利益線-国土の存亡に関わる国防の状態
朝鮮を中立におくことでバッファーを作るイメージのようです。

ところがロシアと中国が手を結んでシベリア鉄道によって遼東半島の南に不凍港をもつことができ、利益線がおびやかされ、これが日露戦争へとつながっていきます。

■大使館
日露戦争にからくも勝ったことで日本は各国に大使館を置くことが認めれます。それまでは公使館しか作れませんでした。これが戦争の「効用」

■第一次世界大戦 遼東半島
日本は青島に進出し青島ー済南の間にドイツが敷設した鉄道を抑えます。戦略的な意味は渤海湾をおさえることができ旅順から船、鉄道で陸の両方で中国を攻撃することができます。遼東半島を抑えたのには、そんな理由があったのですね。

■第一次大戦後
ロシアが革命で倒れ、レーニンとトロツキーは帝政ロシア時代の秘密外交文章をオープンします。イギリス、フランス、日本がえげつないことを帝政ロシアと取り決めしていたことが暴露されていました。アメリカのウィルソン大統領はこのままだと世界中の人が幻滅すると連合国の戦争目的を理想化し出したのがウィルソンの14ケ条。この中に民族自決主義が入っており、ウィルソンの念頭になったのはポーランド、ベルギー、ルーマニア、セルビアでしたが、これがダイナマイトになって植民地からの開放や韓国の3.1独立運動となります。

パリの講和会議には経済学で有名なケインズがイギリスから大蔵省の主席代表として参加していました。ケインズはドイツの賠償額に寛容を求めましたが過酷な賠償額となり、世界恐慌などをへて結局は第二次世界大戦へとなっていきます。ケインズは「あなたたちアメリカ人は折れた葦である」という手紙を残してイギリスに帰国しまう。旧約聖書のイザヤ書に出てくる言葉で、折れた葦の杖を頼みにしているが、それは寄りかかる者の手を指すだけだ、という意味です。

■日中戦争 胡適 日本切腹、中国介錯論
日本はアメリカの海軍力、ソ連の陸軍力が揃う前に中国侵攻をしてくるだろうと考え、戦略として唱えたのが中国は日本と戦争をはじめ天津、上海も占領され2~3年苦戦しながらも戦えば世界中の同情が集まり、ソ連もアメリカも介入せざるをえなくなる。という壮大な構想でした。しかし、この通りに展開しました。また中国兵は強かったようで、日露戦争を戦った伊藤政喜という将軍はロシア軍より強いと言っています。

■太平洋戦争 南部仏印進駐
参謀本部ではフランス領なので進駐してもアメリカは何もしてこないと予想していましたが、すぐに対応。アメリカはドイツがソ連に侵攻したため、ソ連が日本を心配しなくてもすむように援護射撃をしました

■戦況は株価で分かる
報道管制や検閲が行われているので、庶民にはどうも負けているようだぐらいしか分かりません。ところが株式市場が戦争中も開いていて1945年2月から軍需関連ではなく民需関連株が上がり始めます。戦時から平時への移行されると考える人が多く出たようです。

■太平洋戦争 無条件降伏が選ばれたわけ
フランクリン・D・ローズヴェルト大統領がドイツや日本に対して無条件降伏以外認めないと主張しましたが、根底にあったのは第一次世界大戦でドイツに休戦を認めて妥協したのが失敗だったという意識があったようです。ですので日本が早く受け入れていたら原爆投下はなかったという説がありますが、もともと既定路線あったことが史料から判明しています。

国際連盟を脱退した松岡洋右はタカ派のイメージですが、実際は必死に連盟に残るよう調整していました。日本の内大臣に対して、満州に対してゼロか百ではなく8分目ぐらいで我慢し、日本人の潔癖症を発揮し連盟脱退なんてことはやめましょう。日露戦争がギリギリの戦争だったなどの情報がきちんと出ていたら無謀な戦争などはなくなっていたかも分かりませんでしたが、国民もマスコミもイケイケでした。

|

« データが語る日本財政の未来 | トップページ | 持統天皇 壬申の乱の「真の勝者」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« データが語る日本財政の未来 | トップページ | 持統天皇 壬申の乱の「真の勝者」 »