疎開した四○万冊の図書
【書 名】疎開した四○万冊の図書
【著 者】金高 謙二
【発行所】幻戯書房
【発行日】2013/08/15
【ISBN 】978-4-86488-030-5
【価 格】2400円
京都の三月書房で見つけてきました。弘文荘主人である反町茂雄の「一古書肆の思い出」に戦時中、日比谷図書館の図書を疎開される話があり、それだけでなく民間からも貴重な本を買い上げて疎開させた話が出ていました。気になっていたんですが、その顛末を書いた本が「疎開した四○万冊の図書」。あいかわらず三月書房をのぞくと気になる本が見つかります。2012年にドキュメンタリー映画「疎開した40万冊の本」が作られ、監督した著者が書いた本です。
日比谷図書館に赴任してきた館長が中田邦造。戦争が激しくなり東京空襲が始まるなか本の疎開を考えますが、それ以上に重視したのが民間からの買い上げ。全国の他の図書館でも本の疎開を始めていましたが民間から貴重書を買い上げをしたのは珍しいですね。
柳田國男など学者や旧家から本を買い取り、疎開させました。買い取りする時に価格を決めないといけないため各分野に強い古書屋の主人が集められ、その一人が反町茂雄。ほとんど手弁当で貴重な日本文化を残すために奔走することになります。トラックなどが手配しにくい時代となったので都立一中生や高輪商業生などに頼み、大八車で延々と田舎の蔵に運びました。また満員電車に本を入れた重いリュックを背負って疎開させることも行いました。皆の熱意がなければ貴重書の多くはなくなってしまったことでしょう。
ただし買い取りが決まりましたが、疎開される前に空襲で燃えてしまったなど現代まで伝わらなかった本もたくさんあります。日比谷図書館の常備本は最後まで閲覧することにこだわったため、疎開が間に合わず空襲で燃えてしまいました。正倉院御物が現代まで奇跡的に残ったように、それぞれの時代の先人たちが、後世に残すために苦労した結果、現代まで伝わったことを忘れてはダメですね。
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