「忠臣蔵」の決算書
【書 名】「忠臣蔵」の決算書
【著 者】山本博文
【発行所】新潮新書
【発行日】2012/11/20
【ISBN 】978-4-10-610495-4
【価 格】740円
忠臣蔵について書かれた本はたくさんありますが、経済的視点から書いた珍しい本。大石内蔵助が「預置候金銀受払帳」という赤穂城の受け渡しから討ち入りまでの入出金明細書が残っており、赤穂浪士が何を買ったのか記載されています。
■藩が倒産するとどうなる
赤穂藩は5万石でしたが良質の塩田があり、そこからの運上銀などで裕福な財政状況でした。赤穂城の受け渡しが決定し、倒産処理に移ります。こちらも記録がきっちり残っていて、当時の倒産処理がどう行われたかが分かります。
・領地と城、江戸屋敷は幕府へ返却されるが、それ以外のものは藩の独自財産
・藩札(負債)の処理
発行枚数以上の藩札が流通していたようで原因として不正や贋札があったようです。40%棒引きで60%を払って処理。
・船17隻を一括で売却、バルク売りです
・城付きの武具以外の武具を売却
・藩士は馬などを売却
・退職手当の支給 下級の者の方が困窮しやすいので大目に支給 大石内蔵助は受け取っていません
最後、残務処理に関わった者に内蔵助が料理をふるまい、一人ずつに声をかけながら金子を渡したのですが、この時に台所役人だったのが三村次郎左衛門。軽い身分でありながら、内蔵助にいろいろと声を掛けられたことに感激し、侍身分でもないのに討ち入りにも参加しています。
■討ち入りは一大プロジェクトだった
江戸組が早く討ち入ろう、駄目なら少人数でも先に討ち入ると言うのをなだめながら、吉良が確実に屋敷にいる日を選んでプロジェクトを遂行するのは至難の業でした。「預置候金銀受払帳」からは、そういった苦労や軍資金がきれるギリギリのタイミングで討ち入りしたこともよく分かります。
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