日本中世に何が起きたか
【書 名】日本中世に何が起きたか
【著 者】網野 善彦
【発行所】洋泉社 歴史新書
【発行日】2012/06/21
【ISBN 】978-4-86248-967-8
【価 格】900円
日本史のイメージをごろっと変える網野史学です。今回の副題は「都市と宗教と資本主義」。
日本の資本主義の歴史は意外に古く、鎌倉時代にさかのぼります。もっとも原始的なのは「出挙(すいこ)」。初穂として神殿に捧げられた稲を種もみにして農民に貸出、秋に神への感謝をこめて若干の利息をつけて倉庫に戻します。11世紀には米に関して替米(かえまい)という為替手形も登場していました。
荘園経営の記録が残っていて登場するのが宣深という人物。荘園経営を東寺から請け負って備中の荘園へ行くのですが約束よりも少ない運上金しか納入しません。寺から呼び出しを受けたのですが農民が逃げた、代官への接待費がかかったなど言い訳して、なんとかまけてもらいます。ところが別の人物が倍の契約で荘園契約をやると寺に申し出があり、あっさりとお役御免。なんか不動産経営を委託しているような話で、デベロッパーもしっかり管理しているし荘園経営って、こんな感じだったんですね。
村といってもいろいろなものが手に入り、接待できる居酒屋もあったようで、現在の都市機能そのもの。自給自足だったというイメージが強いのですが、分業制になっていて必要なものは交易で手に入れるシステムになっていたようです。資本主義を担当していたのが神や仏に連なる職能集団でしたが、後醍醐天皇によって天皇の権威が落ちたあたりから差別されるようになります。
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