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2005/08/06

近江商人の開発力

 【書 名】近江商人の開発力
 【著 者】小倉栄一郎
 【発行所】中央経済社
 【発行日】1989/3/10
 【ISBN 】4-502-60662-6
 【価 格】1650円



京都の吉岡書店で800円で買ってきました。

日野商人である中井家に残された膨大な大福帳が滋賀大学経済学部に収まりました。筆者が大福帳を調べてみるとすごい複式簿記の仕組みになっていることが判明します。

日本への複式簿記の導入は福沢諭吉が「帳合の法」の訳本を出してからと言われていましたが、200年も前に開発されていました。中井家の場合、本支店会計が導入された管理会計にもなっていました。
研究成果がまとめられ「江州中井家帳合の法」として出版されますが中井家だけでなく鴻池、小野組など他の近江商人でも同様の会計システムが出ていたことが明らかになります。

今でいう貸借対照表、損益計算書を揃え、決算報告まで揃っています。堂島の米相場では世界最初の先物取引所ができていたり、こんあ会計システムが出来上がっていたり日本って、とんでもなく進んでいたんですね。

■利足(利息)
中井家では資本金の10%が利足で、これが目標利益になりました。また、支配人にはここまで稼ぎなさいというプレッシャともなる数字です。10%を超えると「徳用」となり、徳用の10%は支配人に分配されます。自分が独立にもなる数字です。今で言う業績報償ですね。

反対に10%に達しない不足分は「損耗」となり、処理の仕方はいろいろとありましたが、中には今日で言う繰越欠損金のようなものもありました。

■帳合の法
売掛帳や過不足口など色々な帳面がありますが、近江商人は一つの取引を2つの帳面に記帳していました。また記帳を突き合わせることで、片方への記入忘れや誤記入を防いでいました。

毎日、仕事が終わると夕食前に全部の帳面をもってきて、一つの記帳に対して、相手となる帳簿にもきっちり記帳されているか確かめます。あっていれば検証印を押し、これで整合性をはかっていました。西洋から伝わった簿記は貸方、借方で処理をしますが原理はまったく同じです。

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コメント

伊勢商人を研究しているのですが、小倉先生の本は貴重な資料が多くあります。
お求めの本は大切な本でしょうが、私も手に入れたいのですが、どのようにすればいいでしょうか。
もしわかればご教授願います。

投稿: 勢和屋 | 2008/10/25 21:37

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