古書肆「したよし」の記
【書 名】古書肆「したよし」の記
【著 者】松山荘二
【発行所】平凡社
【発行日】2003/3/3
【価 格】2200円
「京都古書研究会 春の古書市」で見つけてきました。東京の下谷・御徒町に明治20年から昭和25年まであった吉田書店という古本屋さんのお話です。
下谷(したや)の吉田書店ということで「したよし」と呼ばれていました。扱っているのは和本や浮世絵などで、当時の本屋でもなかなか扱っていない物でした。
物語は腕のいい宮大工の棟梁・平松十吉から、話が始まります。彰義隊で焼けた寛永寺を再建し、明治政府にはどちらかというと批判的。この棟梁、津の一身田にある高田本山・専修寺の作事も担当していました。
やがて徴兵制が始まりますが、官軍に息子を出すよりかはと吉田家に養子縁組をします。当時は養子縁組で兵役をまるがれることがはやっていたそうです。
この息子、大工の腕はなかったようで、始めたのが古本屋さんです。色々な文豪なども出入りする店で関東大震災の時に火災で店はなくなってしまいますが、鴎外の生原稿だけは持ち出しました。特に「舞姫」の原稿は後に弘文荘の反町茂雄氏が買い求め、上野精一に売っています。森鴎外が売ったものではなく、建場からの持込だったようです。
江戸川乱歩、海音寺潮五郎、吉川英治などお客さんもそうそうたるメンバーで、特に江戸額の三田村鳶魚とは家族ぐるみでつきあっていました。三田村鳶魚が金のない時代は、店に出す前に三田村鳶魚に貸してまず写本させていたそうです。
吉田書店は3代続いて廃業。4代目は作家になって、この本を書いています。松山荘二はペンネームです。
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