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2004/12/06

人生の叡智

 【書 名】人生の叡智
 【著 者】谷沢 永一
 【発行所】PHP研究所
 【発行日】1994/10/6
 【ISBN 】4-569-54478-9
 【価 格】1456円



ご存じ谷沢永一氏の本です。
谷沢永一氏については『読書手帖/引用の織物』の〔282〕東の百目鬼、西の谷沢〔276〕谷沢永一さんの本もぜひご参照ください。

→ 雑書放蕩記 読書の悦楽

登場しているのは富永仲基、末弘巌太郎、三宅雪嶺、森銑三、反町茂雄などなど

以前、新刊で見かけた時は手にとって、パラパラ見て何て難しい本だと思いました。紹介されている人物が始めて聞くような碩学の名前ばかりで。

また、人物紹介にも柳田泉やら何やらたくさんの人名が出てきて、今度はその人の業績などを知っていなければ、何が書いてあるのをよく分からなくなるという実に難解でおそろしい本でもあります。で、買わずにおいたのですが、古本屋の店頭で見かけて、今度は買ってしまいました。(笑)読んだら やっぱり難しかった...

■富永仲基

内藤湖南のおかげで、富永仲基の名前が世に出ましたが、この湖南も大変な人物でした。学歴のない典型的な独学者でしたが、42歳にして新設の京都大学に迎えられました。

ところが文部省の人事担当が「たとえ孔子さまでも学歴にないものを帝国大学教授でできない」と迷言をはいて、もめにもめたそうです。(文部省が折れるまで2年かかったそうです)

以前に、建築家の安藤氏が確か東大教授に任命されて話題になっていましたが(学歴がないのに教授ということで)全然、体質は変わっていませんね。

■木村毅

円本の始まりは関東大震災で関西へ移住した谷崎潤一郎が金策に困って改造社へ行き、1冊1円の廉価版で自分の小説を何冊か出してくれないかというのがきっかけで、これは有名な話ですがプランナーとして山本実彦社長が相談したのが木村毅だったんですね。

単純な作家の寄せ集めでは意味がない。明治以降の文学全門にわたって網羅して、研究資料としても活用できるものにしようと決め、各巻に著者、作家の肖像、筆蹟、書斎などを写真版として巻頭に、また巻末には著者年表を入れ、各作品には解説を付し、時代と作品、人物と著作などの関係も記述するスタイルでした。そして売り出された「現代日本文学全集」は売れに売れて、円本ブームとなりました。

木村毅は新潮社の「世界文学全集」のプランナでもあったんですね。こちらは40万の読者でした。

■森銑三

森銑三にはかなりのページがさかれています。谷沢氏もファンのようです。森銑三も内藤湖南と同じで学歴がなく独学者です。本を読む野武士と形容される方もいます。有名なのは西鶴の研究で「好色五人女」や「永代蔵」、「胸算用」など西鶴の作品と日本史で習いましたが、これって根拠がないことなのですね。

深い西鶴の研究で導き出した結論は「好色一代男」のみが西鶴の作品で後は西鶴の作品ではない。(編集にはたずさわったようだが)昔の本ですから、本には作者の名前もどこにもありません。これを論文にして発表しましたが、西鶴の研究者からは全く無視

学歴のない在野の者が言い出したものということで完全に黙殺(昭和30年頃)でした。谷沢氏は西鶴研究者の長老を名指しで批判しています。一人中村幸彦だけが真正面から受け止めて自分の論を展開しています。

■桑原武夫

現代風俗研究会(どっこで聞きましたね。多田道太郎さんのやっておられた研究会で、熊谷真菜さんも関係したところです)の文章教室の開講の辞(桑原武夫)

「皆さんは天才ではありません。ここでは、詩人や作家のような文学的文章を書くために訓練するのではありません。人さまに迷惑をかけない文章を書くことが、この教室の目的です。」いい言葉ですね。

■反町茂雄

ご存じ古書業界の鉄人です。

昭和20年ぐらいに京都で古俳書を見つけて、購入。その晩、天理に泊まったところに中山正善が「獲物があるはずだ、見せろ、見せろ」と酒の席でなったそうです。

本来なら販売目録に載せて、記録としても残したかったが、しぶしぶと古俳書を取り出した。一座の手から手へ渡り、最後にとった中村幸彦が「これは西鶴が若くして妻君を亡くした時、自分で作った追善集です。西鶴に妻君があった事がこれで始めて分かりました。」と興奮気味にしゃべる。

今では天理図書館におさまっている「独吟一日千句」の発見記ですね。これは元ネタは「天理図書館の善本稀書」(八木書店)にあります。

■山本七平

住友の家法 おもしろいのがあるんですね。

「幼年からまじめに働いているが、生まれつき能力のない者をどうするか。永久に下積みや解雇では、他の従業員の士気に影響する。そこで一応、役職につけるが、その時に有能な新参を補佐でつける。いわば年功課長と有能課長代理のコンビである。」

面白いのはココからで

「その新参のものが企業への忠誠心があり、裏表なく課長を補佐して働くなら抜擢する。」登用試験にもなっているんですね。

ウーン、それにしても難しい本です。出てくる人名でも初めて聞くような名前もあります。後、10年くらい本を読んで読み返すといい本ですね。


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昨日、水谷哲夫さんから谷沢さんについてのコメントをもらいました。先回紹介の『残る本 残る人』(向井敏著、新潮社)のなかでも、谷沢さんを取り上げていることも紹介し... [続きを読む]

受信: 2004/12/07 00:44

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