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2004/12/26

書国彷徨

 【書 名】書国彷徨
 【著 者】八木福次郎
 【発行所】日本古書通信社
 【発行日】2003/5/17
 【ISBN 】4-88914-018-2
 【価 格】2000円



月刊誌「日本古書通信」で有名な八木福次郎氏の最新作です。平成15年に米寿になられたのを記念して出した本ですので、古書の話題が満載の本です。久しぶりに箱入りの本を手にしました。

■「日本古書通信社」の創業
7歳年上の兄が、神戸・元町の福音舎という新刊書店に勤めていた頃、ちょうど円本や岩波文庫が出始めた頃で、安い新刊書では本屋として魅力がなくなるのでは考え、古本屋をやろうと兄がまず東京へ出てきました。

昭和4年で、まず神保町の一誠堂の反町茂雄氏をたより一誠堂に入って5年間修行して、昭和9年に独立して「日本古書通信」を創刊します。ここらへんの話は反町茂雄氏の「一古書肆の思い出」に出てきます。

八木福次郎氏は中学を卒業して、昭和8年に東京へ出てきました。反町氏の紹介で古今書院に入り、ここで3年ほど勤めた後に日本古書通信に入ります。ちょうど業界紙から現在のような一般誌になる頃です。昭和38年に日本古書通信を譲り受けて独立されます。


「書国彷徨」に出てくる古書の話題です。

■「楚囚之詩」掘り出し
透谷の幻の「楚囚之詩」発見については紀田順一郎氏の本にも紹介されていますが「書国彷徨」にはその後が掲載されていました。

「楚囚之詩」は明治22年に発刊されましたが透谷が一部を残し、あとは断裁するよう発行所に言ったため、天下の弧本になっていました。昭和5年の古書展で山積の本の中に30銭の金額をつけられた「楚囚之詩」が出ているのを学生だった村田平次郎が気づきます。

学生が本を持って震えているのを石川厳が見つけ、本を見ると出ることはないと思われていた「楚囚之詩」が目の前に!「君、5円出すので、その本を譲ってくれ!」二人の周りは人が取り囲み大騒ぎに

珍本を掘り出されてしまった窪川書店には、その後、石川巌をはじめとする明治文学の研究者がおしかけるようになり、店主が勉強して明治文学書の専門店となっていきます。掘り出されたショックで窪川氏が何日か寝込んだというウワサはどうも伝説だったそうです。

ここまでは有名な話ですが、面白いのはその後で

■昭和36年にまた出る
業者の交換市に「万象画譜」という袋綴じの和本が出ました。この和本の袋綴じの入紙に「楚囚之詩」が入っていました。ほぐしてまとめてみると3冊分ほどになりました。この話は反町茂雄氏の「日本の古典籍」に出てきます。

この話が日本古書通信に掲載され、記事を読んだ読者が祖父の集めていた和本の「万象画譜」を確かめてみると、ここからも3冊分出てきました。「楚囚之詩」も「万象画譜」も同じ発行所でしたので、透谷が断裁するように言ったのを断裁しないで入紙に使ったのが真相のようです。

■藤村操
明治36年、「厳頭の感」を書いて華厳の滝に身を投じた藤村操と言えば、皆さんよくご存知でしょうが、藤村操は那珂通世の甥で、妹が安倍能成の奥さんで岩波茂雄が学友だったとまでは知りませんでした。

また「煩悶記」という、どうもまがいもののようですが藤村操が書いたいわれる本があります。これがなかなか市場に出ない本でしたが昭和55年に浪速書林の古書目録に出て八木福次郎氏が早々に注文しましたが売れた後でした。後で先に買ったのが谷沢永一氏だとわかったそうです。

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