文圃堂こぼれ話 中原中也のことども
【書 名】文圃堂こぼれ話 中原中也のことども
【著 者】野々上慶一
【発行所】小沢書店
【発行日】1999/3/20
【ISBN 】4-7551-0362-2
【価 格】2200円
文圃堂と言っても多くの方はご存知ないと思いますが、初めて宮沢賢治の全集を出した本屋として有名です。
■昭和8年頃に詩人の草野心平がまだ食えない時代で銀座通りの喫茶
店でバーテンダーをやっていました。その頃無名だったが宮沢賢治を高く評価していた草野心平が知り合った野々上慶一をくどき落として全集を出すことになりました。全集と言っても無名だし、とりあえずいいところだけいれようと3冊にしたそうです。
編集は高村光太郎、宮沢清六、横光利一、草野心平と今考えるとすごいメンバですね。
最初は千部刷ったそうで、あと2百ぐらい増刷して、なんとか採算はとれたようです。装丁は高村光太郎が好意的に無償でやってくれたそうです。その装丁を見て、中原中也がぜひ俺の本も高村光太郎に頼んで彼の装丁で出してくれないかと頼みこんできたそうで、そして詩集「山羊の歌」が出ることになりました。
「宮沢賢治全集」も「山羊の歌」も今、古書市に出たらいくらくらいするんでしょうね。
この後ひょんないきさつから宮沢賢治を読んで、すっかりファンになった十字屋書店から、今度はウチで出したいと話があり、十字屋書店版の「宮沢賢治全集」が出版され、その後、筑摩書房から出されるようになりました。そういえば筑摩からは「新校本宮沢賢治全集」が刊行されていますね。
■昭和の初めにあった「東童」という劇団を創設した宮津という人物
のところへ野々上慶一がやってきて賢治の全集を芝居にしてくれると宣伝になるのだがということで本を置いていきました。読んでみたが「飢餓陣営」「ポランの広場」も面白いし、「注文の多い料理店」や「セロ弾きのゴーシェ」は人形劇向きだし、「銀河鉄道の夜」や「グスコーブドリの伝記」は映画向きだろうということで「風の又三郎」をやることになったそうです。
■昭和6年に20歳ぐらいで創業された文圃堂ですが、色々な作家
(その頃は皆食えなかった)のたまり場にもなっていました。中原中也や太宰治、大岡昇平などなど飲んで騒いだ話などたくさん出てきて、面白いですよ。
出版もやっていましたが本郷帝大(東大)前にあった間口二間、売場面積3坪あまりの小さな小さな本屋でした。出版は2階でやっていたそうです。小さな本屋でしたが日本の出版界に与えた影響はとてつもないものでしたね。
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