古本屋の来客簿 店主たちの人間観察
【書 名】古本屋の来客簿 店主たちの人間観察
【著 者】高橋 輝次編
【発行所】燃焼社
【発行日】1997/10/15
【ISBN 】4-88978-978-2
【価 格】1800円
「古本屋の自画像」「古本屋のうんちく」に続いてシリーズ3作目です。今回も各古本屋さんのエッセイーなどで構成されていて興味深い内容となっています。
■大阪 高尾書店
封書で目録の注文をいただいたことがあった。文面に「大阪がいつも懐かしい。以前、私用で大阪へ行った折、朝日新聞社からの帰り道に、確かお店の前を通ったように思うが、どこにあったか今一寸思い出せない」とありました。引き続き注文もあり、3回ほど取り引きのあった後に相当多数で金額も張る注文があったが、いつも丁寧な文面だったので信用して先に品物を送ったそうです。2週間、3週間たっても送金がありません。
永い間の勘が狂ったかなと思っていたら、何と横溝正史より封書が届きました。「友人の海野十三が先日亡くなったが、未亡人が来られて、大阪の古本屋から浮世絵などを買っていたが、亡くなった今では不要とのことで値段によっては私が引き取りたいという」内容であった。それならそのお金はぜひ仏前に供えてほしいと返事を出したそうです。
数日後、「故海野十三君の忌にあたり...貴殿の出席を賜わりたく..」
という招待状が今度は江戸川乱歩から届いたそうです。
■大阪 カズオ書店
来店が後日になるので、即売会の注文の抽選(注文が重なると抽選になる)を代理でひいてくれないかと依頼が来た。 偶然に引き当てて連絡をすると「あんた、甘党か辛党か」と聞かれ、何気なく辛党と答えると、吟醸酒を1本ぶらさげて来られた。
<ウーン 気持ちはよく分かりますね。もう一つ面白い話を>
あるご婦人がつかつかと勘定場に来られ、「注文してた目録の○○番下さい」
「どちらさまですか」
「司馬遼太郎です」 テレビで見たみどり夫人だった。
■東京 古書日月堂
週に2、3回男子学生がやってくる。本の扱いが手慣れている。大学生か同業の跡継ぎではないかと思っていたら現役高校生だった。幼少時、一家が居をかまえていた早稲田の古本屋街を遊び場に育ったのと祖父が愛書家だったようだ。
三田村鳶魚や柴田宵曲といった名前がスラスラ出てくるし、「青蛙房」をちゃんと「セイアボウ」と読む、実に末恐ろしい高校生だそうである。
こういう高校生ばかりだと古本屋も安泰なんですが他にも京都のキクオ書店の耳学問の話など古書好きにはたまらない1冊になっています。
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