ボン書店
このところ読む本、読む本で「ボン書店の幻」に出会います。
出久根達郎氏の「人さまの迷惑」に「ボン書店の幻」の話が出てきました。ここまでいくと次は古本屋でボン書店が出した本に巡り会えるかもしれません。
ボン書店とは鳥羽一郎という青年がモダニズム詩人の著作を昭和7年から13年にかけて出した出版社です。鳥羽青年自身も詩人でいくつかの作品を残しています。出版社と言っても町の印刷屋という程度で印刷、装丁などすべて鳥羽青年がやっていました。ところが1冊1冊の造本、装丁が実に美しく、一部では相当注目されていました。36点の書物を出してひっそり消えていきました。
小部数発行で戦争でも相当焼けたので、もし出てきたらかなりの高値になるはずです。このボン書店や鳥羽茂について調査したのが内堀さんというモダニズム詩などの専門古本屋のご主人です。
「東京古書店グラフィテイ」を読むまで私もまさか「ボン書店の幻」の作者が古本屋(石神井書林)のご主人とは知らなかったのです。
「人さまの迷惑」によるといつ行っても表戸が閉まっている古本屋があるが、はたして営業しているのだろうかという客に聞かれたそうで、出久根氏の近所の古本屋でもあり、もしや不況の中、夜逃げしたのかなと心配していたそうです。
あとで聞いてみたら良書を作った者の伝記がないことに義憤を覚えて鳥羽青年探索の旅に商売をうっちゃって出かけ、それでできたのが「ボン書店の幻」です。
ただ、やっぱり謎も多く、鳥羽茂も29歳で亡くなったまでは分かりましたがどこで亡くなったは不明のようです。彗星のように現われて彗星のように消えていった幻の出版社ですね。
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