古本商売 蒐集30年
【書 名】古本商売 蒐集30年
【著 者】青木 正美
【発行所】日本古書通信社
【発行日】1984/7/15
【価 格】2500円
神保町の古書会館2階でやっていた古書市で見つけてきました。
●古本と古書の違いですが
古本はセカンドブックまたはユーズドブック、つまり新刊書店にもあるがそれより安く買える本になります。
古書はレアブックとかアンチックブックとなり稀少価値がでるものです。古典籍は江戸以前の和書とかそういう扱ですね。中には国宝なんてのもあります
以前に日本古書通信(第61巻 第6号)に古本屋控え帳という青木氏の連載記事がありましたが、それを読んでいますと、いよいよ青木書店(下町の古本屋)さんも転業を考えているようです。
現在は息子さんが古本屋をやられているそうですが活字離れ、新古書店の乱立(ブックオフなどのリサイクル書店ですね)などが原因のようです。
●古本屋ははたして儲かるか?
資料物を扱う古本屋がではコツコツとバックナンバーなんかを揃えて売る商売ですので、ストックしておく場所がいります。
Aの古本屋は先代からの持ち家で敷地も割と広く、几帳面な性格ですので着実に営業成績を上げています。
Bの古本屋は豪放磊落型で商品管理などはAにおとります。この業者もよく買うので(揃えるために)店は手狭になり新宿の先の農家の土地を百坪ぐらい買って倉庫を作ってそこに置くようになりました。
資料物の揃といってもそんなに高いものではありません。全国の大学で医学部の新設ラッシュなどが起きたときは特需になりましたが、あとはボツボツと売れるだけです。
さて古本屋さんは儲かるのでしょうか?
20年が過ぎました。AもBもあいかわらず商売をやっていますがBの土地は1億円ちかくに値上がりしました。ただBもそんなことにおかまいなしに商売を続けています。
Aはどうなったでしょうか。1億なんて財産ができたでしょうか。まあ無理でしょう。結果としてBが資料を置くために用意した土地が値上がりしただけです。たまたま幸運だっただけで結論から言えば古本屋は儲からない商売なんでしょう。
大体、東京の山手圏内の神田神保町で坪単価いくらか知りませんが、あんな土地で1冊100円とかいう均一本が並んでいるんですから、考えてみたらすごい商売ですね。
●さて本からの話題をひとつ
古書業界の第1人者といえば何といっても反町茂雄氏でしょう。昭和の初めに東大を出て丁稚奉公で古書業界に入ったという変わり種です。古典の価値を普及するのに努め弘文荘という古書店(店舗は無く目録販売だけです)を経営されていました。さて本にはこんなエピソードが載っています。
昭和48年に志賀直哉の肉筆原稿が出て業者市で22万円でS書房に落ちました。半年後にまた市に出たので青木氏も入札しましたが反町氏が41万円で落としたそうです。(前の業者市に反町氏は欠席していたようです)1年後、反町氏の目録にそれが35万円と出ていました。
青木氏はすぐ電話して買ったそうです。それにしてもふにおちないのが反町氏がなぜ仕入値より低い値段をつけていたかです。仕入値を忘れてしまったのでしょうか?
古書業界に詳しい人に聞くと「仕入値より安く売るなんて、しょっちゅうですよ。反町さんは仕入値に関係なく、もう一度自分の価格体系で値をつけているのです」つまり高く仕入れても、その本を調査してその本にとって妥当な値段で売るということです。
反対に青木氏が反町氏の目録を見て「土佐日記 二条為氏筆」が750万とあって、まあ反町氏が扱うのならあるだろうなというシーンも出てきます。
ところがよくよく見ると7500万円という数字で エエ!!
7500万円!!と驚いていると数日後の朝日新聞のトップに記事が出ていて、息子の嫁さんから「反町さんの記事が出ている。」と知らされます。
新聞には「為家本が出てくるとは驚いた。日本でもっとも価値のある本、国が買いあげるべき本だ。値段も安いぐらいだ」という学者の談話まで載っていて初めて本の価値が分かったというのです。すごい業者もいたものですね。
| 固定リンク
コメント