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2004/05/17

ペリカン書房

ペリカン書房

 【書 名】古書巡礼
 【著 者】品川 力
 【発行所】青英舎
 【ISBN 】4-88233-028-8
 【発行日】1991/11/1
 【価 格】1500円

 【書 名】本豪 落第横丁
 【著 者】品川 力
 【発行所】青英舎
 【ISBN 】4-88233-024-5
 【発行日】1990/10/1
 【価 格】2000円


岩波書店の内村鑑三全集はこの古本屋さんがいなければ完成できませんでした。太宰治の「ダス・ゲマイネ」の作品に出てくるペリカンのモデルにもなっています。人と話をするのが得意ではない変わった古本屋さんでした。

古本屋を開業しましたが関東大震災で焼け出されて本郷でレストランペリカンを開業しました。太宰治や東大の先生連中がよくやってきたようです。

串田孫一や織田作之助も常連だったようです。弟が料理を作り、兄が店に出ていました。始めのうちは全然しゃべらずに、これが太宰治なんかには神秘的に映ったようで初期の作品の「ダス・ゲマイネ」にペリカンとして出てきます。

ハンバーグと言っても「ウッ」と言っているような、黙っているようなという不思議な店員だったようです。料理を出す棚には料理がなく本がぎっしりという店でした。本もフランス語や立原道造などが並んでいて、手回しのレコードでボドレールの「旅へのさそい」なんてのを黙ってにこりともしないでかけるというとんでもない店だったようです。

食料事情の悪化とかもあり、学生の夏休みの間にレストランをたたんで古本屋ペリカン書房に変貌したようで、これがまた誰にも言ってなかったので夏休み明けにきた学生なんかが、横丁に入ってきて、びっくりしてぽかんと見ているというのがだいぶ続いたようです。

本には必ず索引をつけなさいというのが持論で、実にすばらしい仕事をされています。世の研究者のために数多くの文献を届けてその仕事を助けられた古本屋さんです。

ポー、ホイットマン、ゲーテなどの研究をした人は皆、この古本屋さんのお世話になっております。誰が名付けたのか「書物探索の冒険家」というアダ名がついています。無類の自転車愛好家で配達でも何でもランニングシャツ一枚で自転車をギコギコという古本屋さんです。

本の装丁を弟の工さん(版画家で有名・レストランペリカン時代のコック)がされており、落第横丁の方は特に美しい本になっています。

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