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2004/03/22

だれが「本」を殺すのか


 【書 名】だれが「本」を殺すのか
 【著 者】佐野眞一
 【発行所】プレジデント社
 【ISBN 】4-8334-1716-2
 【発行日】2001/02/15
 【価 格】1800円

なかなか刺激的なタイトルの本です。書店や版元関係者の多い神保町あたりの書店では一時売り切れになりました。

京都百万遍の京大の前にある吉岡書店の棚に900円で並んでいて、思わず買ってしまいました。著者はダイエーの中内社長を描いた「カリスマ」や民俗学者の宮本常一と渋沢敬三を描いた「旅する巨人」で有名な佐野氏です。

■往来堂書店
「知的生産の技術」研究会・関西で以前にライターの金丸さんに講演していただいたのですが、講演でお聞きした名前の方がたくさん登場します。まずは往来堂書店の安藤哲也さん、独特の本の棚を作り上げた人ですが、往来堂を2000年4月にやめて、オンライン書店のbk1に転職されています。

そのBK1でスタートから1ケ月間の売り上げランキングでは1位に「アマゾン・ドット・コム」(日経BP社)が入ったそうです。オンライン書店の利用者ですから当然ですかね。以外だったのは20位に「ゲーデル、エッシャー、バッハ」が入っているんですね。

1985年に出た、けっこう分厚い本で、コンピュータエンジニアがよく読んでいた本でした。私も当時、読みましたが、構成がなかなか面白かった本です。「ゲ−エーバー」本と読んでおりました。

オンライン書店のベストセラーってけっこうリアル書店とは違っているんですね。他にも金丸さんがさかんにおっしゃていた秋田の無明舎の安倍さんの話も出てきます。

■イトーヨーカ堂の鈴木社長
元々は東販という取次会社に勤めていて、イトーヨーカ堂は途中入社だったんですね。これは知りませんでした。セブンイレブンが雑誌を含めた売り上げでは紀伊国屋書店を向いて日本一ですが、なるほど出版業界もよく分かっていたんですね。

■書籍の原価率
 取次と書店の手数料   30%
 版元          70%

 問題は返品率で
  20%とすると実売部数は80%で、70%×80%=56%
   が版元が1冊の本から得られる収入

 <支出>
 印刷・造本代      20%
 印税・構成、編集費   12%
 広告費         10%
 返品のための倉庫代    3%
 人件費         10%
        計    55%

1冊1000円の本とすると収入(56%)−支出(55%)で利益は10円となります。1万部刷っても利益はわずか10万円に

もし、売れて返品率がゼロなら70%−55%で1万部で150万円になります。10万部なら1500万円! 当たれば大きいですね。

■芥川賞
元々は菊池寛が本が売れない2月と8月を何とかしようと文芸春秋の2月号と8月号に芥川賞と直木賞を創設して載せたのがきっかけです。つまりニッパチ対策だったわけです。

本好きには色々と現在の出版業界を考えさせてくれる1冊です。すぐれた作家の定義も出てきます。「すぐれた作家とは読者の時間を一時止めることのできる者である。」携帯やインターネット、ゲームなど本以外の媒体と張り合うにはやっぱり作家の力量でしょうね。

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